起業教育とは?
近年、総合的な学習の時間において「生きる力」を育む手法として、起業教育が注目を集めています。全国的にはもちろんのこと、東北でも起業教育を実施する学校が増えてきています。しかし、起業教育に対する理解はまだまだ充分ではないことも事実です。「起業教育」という名称による誤解も多く、また「どのように実践したらよいかわからない」という声も多く聞かれます。起業教育では、「商品開発から広報、販売、決算にいたる企業活動の一連の流れを模擬的に体験する」という形が基本的なモデルとなっています。しかし最近では企業活動のみならず、NPOや地方自治体など社会活動の模擬体験を取り入れる学校も増え、起業教育の幅は確実に広がりつつあります。特に「東北モデル」と呼ばれる起業教育は、地域資源や地域の特色を活かすということが掲げられており、企業活動に限定されることなく、さまざまに教育活動の幅を広げることが可能です。< SPAN>
起業教育についてよりよく理解していただくため、以下に「起業教育とは何か」ということを、より詳しく考えてみたいと思います。
起業教育の目的
起業教育のもっとも根底にある目的を一言で表すならば、「自ら課題を発見し解決する能力を高める」と言うことができます。より良く生きていくためには、自分の身の回りの事象をよく観察し、その中から障害となりうる課題を見つけ出す能力、そしてその課題を知識や技術、経験を用いて創意工夫しながら解決していく能力が必要不可欠です。(スポーツをする人にとって、自分の欠点を見つけ、練習によって欠点をなくしていく行為は、より良くスポーツをするために必須であり、それと同じことと言えます。)起業教育は、課題の発見・解決能力を実生活に即した形で体系的に学び取ってもらうことが目的です。
課題発見・解決能力とは、色々な能力が複合的に組み合わされたものです。課題を発見するための情報収集力、その情報をかみ砕き課題を明らかにする分析力、どの方法がもっとも有効かを導き出す判断力、そして決断力等々。これらの能力は起業家的資質と重なるものであり、それらを養うために、起業教育はもっとも有効な手段であると言えます。
起業教育に対する誤解
◎「起業家を養成するための教育」という誤解
起業教育はしばしば「起業家教育」と呼ばれることがあります。これによって「起業家を養成するための教育」という勘違いをされがちです。起業教育は、実際の会社経営者に講演していただくなどして、起業家精神を学ぶ機会も多くあります。しかし先にも述べたように、起業教育の目的はあくまで「自ら課題を発見し解決する能力を高める」ということであり、起業家を養成するということではありません。もちろん、起業家精神を学ぶことによって、今まで消費者としての視点からしか考えることのできなかった事象に対し、提供する側としての視野から考えられるようになるというのは、視野が大きく広がるという意味で、起業教育の大きなメリットと言えます。
◎「金儲け教育」という誤解
起業教育は、企業活動の一連の流れを模擬的に行う事例が多くあります。そのため、「企業活動」=「利益を追求」とのイメージからお金儲けを連想してしまい、そこから「金儲け教育」という誤解が生じてしまっています。たしかに、企業活動の一連の流れを知ることによって、世の中のお金の流れが理解できたり、お金に対する知識が身についたりすることは、起業教育の重要な部分ではあります。ただしそれは、多くの学びの中の一つであり、全てではないということは言うまでもありません。
こういった誤解によって、起業教育への取り組みを無意識的に見送ってしまっている学校や教育機関もあります。起業教育の誤解されている部分は、裏を返すと大きな教育効果があることがわかります。誤解による危惧を捨て、多くの学校や教育機関で起業教育へ取り組まれることが期待されます。