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山形県尾花沢市立鶴子小学校
■ 教頭の手記(実践中に直面した課題について相談した手紙)

山形県尾花沢市立鶴子小学校 柏倉康樹 教頭が、活動実践中に直面した課題(特に収益をどうするか)について、(株)セルフウイングの平井由紀子社長にEメールで相談した手紙と、それに対する返信

 

T 2003年7月30日

   柏倉教頭から(株)セルフウイングの平井由紀子社長へのメール

 

 鶴子小学校の柏倉です。ご無沙汰しております。学期末で忙しくてご連絡が遅くなりました。申し訳ございません。

 おかげさまで無事に1学期の販売活動が終了しました。追って、デジカメ等の記録など様子が分かるものを送付したいと思います。

 さて1学期の成果と課題を簡単にまとめてみますと 次の通りです。

 成果

 1 販売活動はおおむね盛況でした。思った以上に子ども達は満足しています。

   7月3日の地区内の直売、7月10日の朝市での販売、7月17日の授業参観での販売と、大根の収穫に合わせて、児童の計画に従って行いました。

   → 地域版の新聞にも取り上げてもらい、励みになりました。

 2 価格を決めたり、付加価値(大根のレシピ作成、当たりくじ、大根おろし等の試食準備、大根収穫日記、肩たたきサービス等)を考えたり、会社毎に工夫もみられました。

   → 手作りのポスターやちらしなどにも子どもの工夫が見られました。

 3 概ね純利益がそれぞれの会社9,000円前後ありました。

   一番の収益の会社は1万円を超えました。

   (必要経費として9,000円ほどかかりましたが、差し引きの金額です。)

   → 実際にかかった費用が概算でしか出せないのが残念。(大根の他の栽培や花苗等の肥料などと一緒にしているため)

 4 3回の販売を繰り返す毎に、宣伝の声やお客さんへの対応、会社毎の仕事分担など上手になってきていて、授業参観での会社毎のアピールなど自信を持った発表で、子ども達が生き生きと活動しました。

 

 課題として次のことが出てきました。

 

 1 大根を売り切ることに気持ちが先走り、収益を少しでも上げようとする気持ちが足りない活動になってしまった。(1本8円で売ってしまったり、おまけの大根も多すぎた)

   → いったいこの体験のねらいは何だったのか、教師も子どもも迷ってる感じ・・・収益を少しでも上げるんだという意識がどっかにいっている・・・。

 2 地区民や保護者などの温かい協力があったから売り切ることができた。でも本物の販売体験になっていないのではないか。祖母など10本単位で買ってくれることが多く簡単に売れすぎている。

   → これでいいのか・・・だから?

     2学期の活動は、市民を対象にしたい。もっと人にものを売ることの大変さを子どもに教えたいとも思う・・・。

     今回は会社の経営のよさで差がついたのではない・・・1万円の収益の出た会社も「おつりはいらない」という善意で差がついただけ。

 3 収益金についてどうするかを児童に考えさせたいが、子ども達は自分たちで好きな物を買いたいという考えも出ている。

   → どうなのか? 地区民へのボランティアなどへ使いたいという考えに導けないか?収益金の扱いが分からない???

 

  4 栽培体験と販売活動の両方をねらっていたので、どっちつかずのところがあり、時間の制約もあって、活動時間を設定するのがとても大変だった。先生方の負担、PTAの負担も大きい。

   → これが一番の課題! じっくり栽培したり、観察記録をとらせたりする時間がとれなかった・・・あの青々とした大根の葉やみずみずしい大根の白さに十分に感動する間がないままに、販売活動へ・・・余裕の無い活動にくたくたの面もある・・・。

 

 今、2学期の活動について計画を練っているところです。私たちが進めているこの活動でいいのかどうか不安な面もありますが、今後ともよろしくご指導お願い致します。

 しかし、忙しい毎日だったけれど先生方や子どもたちが何か今までに無い何かをつかん

でいることは確かです。それをさらに明確にしていきたいと思っています。

 山形県村山総合支庁の大川さんも早朝5時半すぎに畑に顔を出してくれたり、一生懸命ビデオで記録してくれているその姿にも感謝しています。

 それではまた・・・今年の夏はいつもの夏より涼しくてお米の生育が心配です・・・・。

 

 2学期、平井社長に是非、もう一度来て頂き、ご指導をお願いしたいと思います。

 よろしくお願いします。

 

 

U 2003年9月30日

   柏倉教頭から(株)セルフウイングの平井由紀子社長へのメール

 

 ご無沙汰しております。平井社長はお忙しくていらっしゃるのではないでしょうか。

 こちらはいよいよ、今年度の起業教育学習の本番を迎えようとしています。

 本校の子どもたちの会社が店開きをします。大根販売の大イベントです。

 国民文化祭(今年は山形が開催県)にちなんで、10月11日と12日に開かれる「まるだし尾花沢ふれあい祭り」に本校の子どもたちの店も出させていただくことになりました。

 今子どもたちは当日の販売に向けてがんばって準備を進めています。

 8月から育てている大根を中心に売りますが、それぞれの会社で鶴子らしい「おまけ」をつけて販売する予定です。山の自然を利用したリース、どんぐりごま、コースター、木の葉スタンプ、しおり等 お客さんに喜んでもらえるように工夫を子どもたちなりに考えています。

 当日は市の中心部にある市民体育館の駐車場を利用したイベントに加わります。

 尾花沢市民を対象に大根を中心に800本ほど売りたいと考えています。(3つの会社)

 1つの会社は、「おしん」で有名な銀山温泉の朝市に店を開く予定です。

 

 平井社長にも当日の子どもたちの様子を見てもらいたいと思うのですがどうでしょう? なんだったら銀山温泉のお泊りになったらいいのに・・・・。

 山形県村山総合支庁の大川さんとも相談してみます・・・。

 よろしくお願いします。

 

 

V 2003年10月10日

   柏倉教頭から(株)セルフウイングの平井由紀子社長へのメール

 

 いよいよ明日は、今年度4月から取り組んできた起業教育のフィナーレを飾る販売活動日です。今日は午後2時から学校の畑に行き大根を収穫しました。(3会社分、約900本)

 小中併設校の利点を生かして23名の中学生も一緒に大根洗いを手伝ってくれました。

 今回の販売では、地元の鶴子のよさを市民にアピールするためにおまけもいろいろ工夫しました。

 つるで作ったリース、木を輪切りにしたコースター、木の葉を使ったしおり、これまでの自分たちの栽培を綴った大根物語のパンフレット・・・。

 どれも自分たちの自己満足に終わるおまけかもしれませんが、子どもたちが自分たちだけで考えたおまけです。

 大根も1本90円で販売することに子どもたちが決めました。

 加えて学校の畑でとれた、じゃがいも、さつまいもも少し販売します。

 学校の「なめこ園」のなめこはまだ収穫できなかったので、地元で栽培している「なめこ」と「ひらたけ」も仕入れることになりました。

 1会社明日は3万円以上の売上が見込まれます。経費を除いても1万7千円以上の収益が見込まれると事業計画が提出されました。

 あとは明日たくさんの市民が買いにきてくれることを願うだけです。

 

 この活動は子どもたちにどんな力をつけてくれるのでしょう?

 私なりに考えていることは(教育者として)

 1 全校で40名の学校でも、地域の協力をもとに市内に発信できる店作りができるすばらしさ、そして店を開くことで、多くの人々とコミュニケートできる力を身につけてくれたのではないか。

 2 大根一つとってみても、これだけの手間隙がかかるという事実を児童は実感したことで、店に並ぶ野菜(それ以外のものも)の価格や商品としての価値を実感したと思う。

   つまりものの価値に気づくことができた、ものを大切に思う気持ちが育ったと言ってもいい。

 3 ものを生産したり、販売したりすることの喜びを体験できた。作る喜びや売る喜びを実感できた。

 4 鶴子というふるさとの特性やよさを子どもは認識したに違いない。ふるさとを大切に思う気持ちが育ったとも言えよう。

 

 明日の販売がどんなふうになるか、かなり心配な部分もいっぱいありますが、とにかく寝ます。明日は、銀山温泉の朝市に間に合うように、私は早朝4時半に家をでます。

 おやすみなさい。

 

 

W 2003年11月12日

   柏倉教頭から(株)セルフウイングの平井由紀子社長へのメール

 

 山形県の鶴子小学校の柏倉です。ごぶさたしています。

 おかげさまで2学期の販売活動も無事に終了し、やっと一段落ついたところです。

 子どもたちも大変満足できた大根の販売でした。

 テレビの取材もあり、広く県内に紹介され、楽しく学習できたことに大満足です。

 さて、今はまとめの学習を進めていますがとても困っていることがあります。

 収益金の使い道です。純利益が1,2学期の販売あわせて4つの会社で合計11万円を超えました。その使い道について子どもたちで会社ごとに会議を開いて今話し合いを深めています。

 問題点は、児童の給料として、自分のものを買うとか山分け(給料として)することでいいかということです。

 本校では総合的な学習の時間を使っての学習ですので、基本的に児童の考えを尊重しています。

 今日もその会議がありました。子どもは収益金を「自分の好きなものを買う」「ボールなど学校で必要なものを買う」「ユニセフなどに寄付する」などと決まりつつあります。収益の中から3つに振り分けて使いたいというのが子どもの考えです。

(本心は会社のお金を等分して自分で使いたいと思っているのだと思います。)

 学校は教育するところです。地区の人から得たお金を、自分で使うというのはあまりにも勝手なのではないかとも考えられます。

 栽培でも多くのボランティアのPTAや老人クラブ、栽培協力者がかかわりました。感謝の会の費用を収益からも出し合いました。収穫に必要な経費もすべて差し引いています。そして残った利益を、どうすればよいのでしょう。

 教師の願いとしては、「自分の好きなものを買う」のではなく、人のため、地区の人たちのために使ってもらう、ボランティアとして活用する、来年度の活動の資金にするなどに使って欲しいと思っています。

 それを子どもに強要するのもむなしいと思います。

 起業家教育を進めてきた最後の難題は、収益の現金を子どもに自由に使わせることに問題はないのか・・・とても困っています。

 よいアドバイスをお願いします。お忙しいところすみません。

 

 

X (株)セルフウイングの平井由紀子社長から柏倉教頭への返信メール

 

柏倉先生

 

 御無沙汰をしております。

 基本的に、小学生の場合の起業教育は、成功体験、良い失敗体験からなるもので、アントレプレナーシップ=起業家的な「精神」、チャレンジ精神を学んでもらうことを大きな目的の一つにしています。

 

 利益については、まず協力してくださった地域の方にお礼の気持ちを表すことが今回は最優先かと思います。山形県の大川さんたち、そして先生がたもそうでしょう。

 

 そして、次に考えるのが、自分で稼いだお金で、自立をすることです。でも今の自立は、家族や地域、学校のみんなにささえられているので、その方たちに対して、どうするか?

 

 また、自分達より困っている人に、「自分で働いたお金の一部を「自分の意志で」つかってもらいたい・・と思って欲しいと思います。

 私は、よく、大垣市役所にいらっしゃる日本で始めて周りの反対をおしきって自分の骨髄を寄付し、それが現在の骨髄バンクにつながっている話などします。

 

 しかし、もう一つ大事なのは、「自分ではじめて働いたお金」をどうするかを自分たちが、上記のような話を聞いたあとに、自分たちで、決めるということ、自分で労働したことが、自立の第一歩になるということをきちんと理解することなので、たとえ、数百円でもいいので、きちんと私たちは「給料袋」にいれて、ひとりひとり拍手をして、手渡します。

 

 取り留めのない話になりましたが、これは教育の場であるので、大人は毅然として、お世話になった地域の人、県の人、家族の人、先生がた、その他の人に、まずお礼をするのが大事だ!と主張されていいと思います。

 

 その次に、余ったお金を、成功体験、自立体験の証として、個人に渡し、その使い道のなかには、「寄付」という好意があって、会社をしてもうけをだすと、ちょっと低学年にはむずかしいけど、税金という、「みんなのためにつかってくださいな」という社会貢献をしているのだということを、はなしてあげてください。

 

 自分たちで考えることも勿論大事ですが、大人が堂々と「人の道」をとく良い機会でもあると思います。

 みんなで、考えて、するべきお礼をしたあとに、みんな、1人1人に、「給料袋」をあげてください。そして、その中から寄付の概念を教えてあげてください。

 

 状況が良く把握できてないので、お答えになっているかどうか不安ですが、参考までに寄付行為を説明している教科書の一部をファクスしますので、ファクス番号を教えてくださいますか? 私は明日から週明けまでオフィスにおりませんが、メールは読めますので何かあればご連絡ください。

 

 先生、こんな面倒なことに、チャレンジしてくださった、先生方、地域の方、県の方、関わってくださった全ての方のアントレプレナーシップに感謝します。とても、大変なことですが、大人が苦労して、本気になった分、子供はそれを感じているような気がします。

(生意気いってすみません)